【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第6章 一歩先*
「美味しいですか?」
「はい!それはもう!!」
今週は東都プリンスホテルのラウンジで
イチゴとチョコをふんだんに使った
期間限定ブッフェが開催されており、
沖矢はそよ香を連れて来たのだった。
ラウンジはほとんどが女性客で、
背の高い沖矢は立っているだけで目立ってしまう。
男があの狭い所にいたら邪魔でしょう、と
美味しそうなケーキには見向きもしなかった。
「僕のことはお気になさらず。
満足するまで召し上がってくださいね」
そう言うと、ウェイターにコーヒーを頼み
新聞を読み始めた。
チョコレートの本場ベルギーやフランス、
イタリア、スイスなどにいくつもの店を出店する
有名パティシエがこのブッフェのためだけに
考案したスイーツが所狭しと並んでいる。
女性でも食べやすいように小さくカットされた
スイーツはまるで宝石のようだ。
目で見ても美しい赤と茶のコントラストに
女性客たちはスマホのカメラを向ける。