【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第6章 一歩先*
「では、僕は用事があるのででかけてきます。
夕方には戻れると思いますので」
「はぁい。いつになったらポアロに行けるのー」
ふてくされた顔で嫌味を言うそよ香。
沖矢はそれを聞き流すと言葉を続けた。
「…くれぐれも、知らない人を家に入れてはダメですよ」
「??そんなの当たり前じゃないですか」
リビングのソファから沖矢を見送ると
そよ香はテレビをつけた。
撮り溜めていた録画一覧から
今期のドラマを選ぶ。
再生ボタンを押すが、頭の中には入ってきていない。
(…今週は行かないのかな)
毎週金曜日になると沖矢から週末の予定を聞かれ、
無いと答えると土日のどちらかに
チョコレートのスイーツを取り扱うカフェをめぐるのが
二人の定番になっていた。
最初のころは好物であるチョコレートに
目がくらんでついて行っていたのだが、
ある日を境にそれは変わった。