【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第6章 一歩先*
「な、何か?」
「いやぁ、迎えに来ること自体
嫌がられるかと思っていたので…」
「どうせ断っても来るんでしょうから、
先に妥協案を出したまでです」
「それは賢い選択ですね。
今日の夜ご飯はビーフシチューですよ」
そう言って沖矢は優しくアクセルを踏んだ。
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沖矢との共同生活も、
1ヶ月を過ぎようとしていた。
そよ香のスマホに発信機や盗聴器を仕掛けた
沖矢だったが、今のところ組織の人間が
そよ香に接触した形跡も、
そよ香が自分から行動を起こすこともなかった。
(そろそろ動き出すころかな、安室君…)
「えぇ~、またですか」
「すみません、書留の書類が届くので…」
職場には復帰したものの、
そよ香はまだポアロのバイトには戻れないでいた。
沖矢からアレコレ理由をつけられては
行かせてもらいない、というのが本当のところだ。