【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第6章 一歩先*
「イケメンとは…嬉しいですね。
そよ香さん、どうぞこちらに」
サッと助手席のドアを開ける様は
まるで英国紳士のような立ち居振る舞いだ。
「じゃぁ、私はこれで!お邪魔しました~!
春野さんまた話聞かせてね!」
「せ、先輩!違います!!」
ウィンクをしながら走り去る先輩の背中に向かって
そよ香は声高に叫ぶが、
ビル街にむなしく響くだけだった。
がっくりとうなだれ、
そよ香は力なく助手席に座る。
「そよ香さん、僕はイケメンだそうですよ」
「…真に受けてるんですか?
お世辞ですよ!お・世・辞!!」
「つれないですねぇ」
沖矢は苦笑いをすると車のエンジンをかけた。
「だいぶ日は伸びましたが、
帰りが遅くなりそうな日は迎えに来ますから」
「…今日みたいにビルの真ん前で待つのは禁止です!
恥ずかしいので!!」
「……」
急に黙る沖矢に少しきつく言い過ぎたかと
心配になり、顔を向けると
ぽかんとした表情をしていた。