【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第6章 一歩先*
そよ香は一度目を閉じ、深呼吸を繰り返した。
(大丈夫、私には沖矢さんが…)
自然と沖矢のことを思い出し、
頼りにしてしまっていることに危機感を覚えながらも
そよ香はメールボックスに溜まったメールに
目を通すことから始めた。
*
*
*
「お疲れさまでした」
久しぶりの仕事を終えると
疲労感が押し寄せる。
溜まりにたまったメールや書類を片付けるだけで
1日が終わってしまった。
事務所が入るビルを出ると、
真正面にひときわ目立つ真っ赤な車が停まっている。
「お疲れ様です」
「お、沖矢さん!?」
黒のハイネックに、グレーのジャケットを合わせ
車に寄りかかりながらそよ香を笑顔で出迎えた。
右手はズボンのポケットに入れたまま、
左手をひらひらと振る。
「えっなに!?春野さん彼氏いたの!?
超イケメン!!」
一緒にビルから出てきた先輩が
思ったことをそのまま口にする。