• テキストサイズ

【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜

第6章 一歩先*





「春野さんが有休で休むって連絡があった日から

所長なんかおかしいの。

社員全員に有休取らせ始めたり、

冠婚葬祭の休暇もすぐとれるようになったのよ」


「へ、へぇ~そうなんですか…

私は…何も……」



一瞬、そよ香の頭にいたずらっぽく笑う沖矢の顔が

思い浮かんだが、

先輩に説明するのも面倒で、口にすることはなかった。




「そういえば総務の田中君、辞めたみたいよ」



ドクン、と心臓が波打つ。



「え…あ、そう、なんですか…」



それまで規則正しく脈打っていたはずの心臓が

突然乱れる。

息苦しささえも感じ、先輩の声が遠のいていく。



「春野さん、大丈夫?

まだ調子悪いんじゃないの?」


「…す、すみません。大丈夫です!」



自分をごまかそうとパソコンの電源をつけるが、

マウスを持つ右手が震え、ポインタが定まらない。


この1週間、いろいろなことが起こりすぎた。

忘れたくても忘れられない傷ばかりが増える。








/ 272ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp