【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第5章 君のため
ドッドッドッ…そよ香の心臓の鼓動は
先ほどから変わらない。
でも今はこれが恐怖のせいなのか
それとも沖矢のせいなのか、分からないでいた。
「そよ香さん、こっちを向いてください」
「いやです…」
「大丈夫、何もしませんから」
おずおずとそよ香は沖矢の方に身体を向ける。
「僕は迷惑だなんて思ったことはありません。
それに、前にも言ったでしょう?
姫君を守るのは、騎士の役目だと…」
沖矢はそよ香の握られた手をほどき、
指先に優しくキスをした。
「…何もしないと言いましたよね?」
「まぁ、言葉の綾と言いますか…」
とりあえず必要なものを持っていきましょう、
都合が悪いのか沖矢は立ち上がってそよ香を促す。
「そうですね…」
そよ香はクローゼットから
大きめのスーツケースを取り出すと
数日分の下着や洋服、化粧品等を詰めた。