【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第5章 君のため
「このままここに住むのも不安でしょうし、
しばらく工藤邸で僕と一緒に暮らしませんか?」
沖矢の柔らかいまなざしに、
そよ香は今すぐにでも「はい」と
言いたくなってしまった。
「…できません。
これ以上ご迷惑はかけられませんし
あなたを巻き込みたくない…」
ぎゅっと両手を握る。
「…ではなぜ僕を引き留めたのですか?」
沖矢は痛いところを突いてきた。
本当なら自分でどうにかしなければならない問題、
一人でかたをつけなければならない問題。
それなのに、あの時沖矢を追いかけた理由は…
「僕ならどうにかしてくれそうだと
期待していたんですか?」
沖矢の顔が徐々に近づいてくる。
いつの間にか顎に手を添えられて
上を向かされていた。
「…そ、れは…」
唇と唇が触れそうになる距離まで近づいた時、
「…すみません。いじわるなことを言いました」
そう言って沖矢はそよ香の隣に座った。