【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第5章 君のため
沖矢は顎に手を当て、
再び玄関からゆっくりと室内を見て回る。
(玄関や窓を無理やりこじ開けた形跡もなく、
ただ開けられただけの引き出し…
安室君、今回は “どちら側” なんだ…)
「…?」
キッチンの戸棚に小さな紙切れが挟まってる。
そよ香の身長ではギリギリ届かない高さだ。
その紙には8桁の数字が書かれていた。
『35284121』
(なんだ、この数字は…暗号か?)
沖矢はその紙をポケットに忍ばせた。
他にも同じような物があるか
部屋を探してみたが、見つからない。
「そよ香さん、」
少し離れたところから声をかけるが、
そよ香はソファに座ったまま
ぴくりとも動かないでいる。
沖矢はそよ香に近づくと膝をつき、目線を合わせた。
「そよ香さん」
そよ香の意識がこちら側へ戻ってくると、
怯えたような目をして沖矢に顔を向ける。