【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第5章 君のため
そよ香が玄関のドアに鍵を挿すと
それは既に開いていた。
「…え?」
シン…とした室内の空気は、やけに重苦しい。
「だ…誰かいるの?」
自分の家なのに、物音を立てずそっと足を踏み入れる。
人の気配は無いが、
リビングへ続くドアを開けると
そよ香は言葉を失った。
「……っ」
所々、引き出しが開けっ放しになっている。
明らかに誰かが侵入したような形跡がそこにあった。
そよ香はビジネスバッグを床に放り投げ、
寝室へ向かう。
ベッドについている引き出しを抜き切ると、
腕を突っ込んでアレを探した。
「あった…」
ベッドの裏からそれを引き剥がし、
シリンダーの中を確認すると、
間違いなく弾は一発だけだ。
(良かった…)
ドッドッドッ…と心臓の音が直接脳に響いてくる。
冷や汗がでて、髪が顔に張り付いているのが分かった。