【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第5章 君のため
人間の身体から注射針で抜くものなんて一つしかない。
「血液採取?」
あのアザの数からして、1日に何度も刺されていたのだろう。
何のために?
そよ香の血を誰かに輸血でもしていたのか?
「…今日も眠れそうにないな」
僕は熱いお茶を淹れ直すと
ノートパソコンの電源をつけた。
*
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「そよ香さん、忘れ物はありませんか?」
「はい、大丈夫です。お世話になりました」
一夜明け、そよ香が自宅に向かったのは夕方だった。
沖矢は午前中から用事があると言い、
出かけてしまっていたからだ。
荷物はビジネスバッグだけだし、
車で送ってもらうほどの距離でも無いため
自分で帰ると言ったのだが
「まだ病み上がりなんですから、大人しくしていてください」
と最もらしいことを言って、
引き止めたのだった。