【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第5章 君のため
「…なんだ、そんなことか。
人間、生きていれば隠しておきたいことの
1つや2つくらいあるだろう。
僕にもあるしな」
「……」
「そよ香は隠しておくことを
悪いことだと思っているのか?」
勢いよく顔を上げたそよ香の瞳からは
涙の粒がこぼれる。
「それは自分や家族、かけがえのない人たちを守るため。
僕は悪いことだとは思わない。
隠したものの重みで苦しくなってしまったら、
その時はまた、僕が君の力になろう。
…ほら、泣くな」
ヒロたちに見られないように
背を向けてそよ香を隠す。
そう、これも君のため。
「ありがとう…ゼロ」