第2章 鉢屋三郎
『ぅ………』
「起きたか」
『は、ちやせんっぱい…!?』
ぱちぱちと重い瞼を開き、葉の間から差し込む光に顔を歪ませながらも体を起こせば先輩に声をかけられる。そ、そうださっきまで…だめだ思い出すだけで恥ずかしい…
鉢「全く…男の前でそんな乱れた服装のまま寝るとは大分危機感がないんじゃないか?」
『ゔっ……』
確かに鉢屋先輩の言うとおりだ…いつ襲われるかも分からないし、先輩だったからとはいえ相手は男の人だ…もっと用心しないとだよなぁ…
鉢「私だったからよかったものの…次は気をつけるんだぞ」
『いたっ…はい…』
パチンっと、おでこに痛みが走る…恐らくデコを小突かれただけなのだろうけど…
鉢「これからは気を付けろよ…さて、立てるか。あれだけ激しくしたあとだからな、辛ければ言ってくれ。背負うなり何なりしてやる」
『お、お気遣いありがとうございます……』
鉢「体は痛くないか?」
『はい、全然…』
鉢「そうか…じゃあ、服の乱れをちゃんと直して帰るぞ」
『はっ、はい…!』
そうだった…私まだちゃんと服着てなかった…このままだったら危なかったかもしれない…喜八郎とかくのたまのみんな心配しちゃうだろうな…
鉢「……着替え終わったら言ってくれ、早めに帰らないと日が沈む可能性もある」
『は、はい…』
今は陽の光の位置からして昼から夕方の間だろうか…確かにここは山奥だし…早く帰らないと日が暮れたら何があるかわからないな…
『お、終わりました』
鉢「そうか…では、急ぐぞ」
『は、はいっ』
おいて行かれないように、早く追いついて私も帰ろう