第5章 4
私は慌てて自分の部屋を飛び出す。
そのままの勢いで家の外に出る。
何も考えずに飛び出してきたが、辺りを見回して、傘を持った男しか付近に居ないことを確認してホッとした。
玄関に置いてある傘を手にして走る。
そう。傘を持っている男の方へ走る。
そんなに遠い所にいた訳じゃないからすぐにたどり着く。だけど勢いだけで来てしまったので何を言えばいいのか分からなくなってしまった。
男は様子を伺うように見てくるが話してくるとはなく、無言が続いた。
先に沈黙を破ったのは男の方だった。
「…もしかして …さっきの子?」
「…えっと… 多分そうだと思う。」
「あなたはさっきの人殺しさん?」
「…たぶんそうだね」
やっぱりそうだったようだ。
「と言うことは、その傘私の傘?」
初めて見たときは怖いと言う感情でほとんど動くことも喋ることも考えることもてできなかった。だけど今は思っていた以上に喋ることが出来ている自分に驚いている。
「うん。さっき君が置いていった傘。」
ここまで会話しておいてなのだが、此処でこの人と話していると、傘は無事に帰ってきてもまた怪しくなってしまうのでは?と思ってきた。