第7章 甘味屋
「何だか幸せそうな笑顔で、楽しかったのがこちらにも伝わってきますよ。華子さんと斉藤さん、仲良しになれたみたいですし。無理言いましたけど、お手伝いをお願いして、本当良かったです」
「ノブちゃん。おはぎだったわよね?ちょっと待っててね」
真っ赤な顔になった華子さんは、話を逸らして店の中に逃げていった。うんうん、若いっていいな。好きな人にドキドキする感じ。見てるこっちまでドキドキして、幸せになる。そんなことを考えていると、顔がニヤニヤとしてしまう。
「おっ!ノブじゃないか。何で一人でニヤニヤしてるんだ?」
おじさんがお饅頭を持って出てくる。
「いえいえ、華子さんから昨日の買い出しのお話を聞いて。若いっていいですよね~、おじさん。こっちまで幸せになります」
にんまりと笑うと、至極真面目におじさんに突っ込まれる!
「いや、どう考えてもノブの方が若いだろ!」
「そうでした」
「ノブ、華子には内緒だが、帰ってきた時は二人ともなかなかいい雰囲気だったぞ」
おじさんがこっそりと教えてくれる。
「やっぱり。華子さんの話から何となくそんな雰囲気が出てました。あー楽しみですね!親にとって子どもの幸せが何よりですからねぇ」
「ああ。華子が幸せになるなら、それが一番だ。ん?ノブは親の立場か?」
おじさんは華子さんと同じような笑顔で、こちらをみる。
「体は若いですけど、考えは親年代に近いとよく言われます。今私は斉藤さんの保護者です!」
「はっはっはっ!ノブは何かと面白いなぁ。今日はおはぎを一つおまけしてやろう!」
「わぁ!ありがとうございます!嬉しいですっ!」
「あらあら、二人とも楽しそうね」
顔色が落ち着いた華子さんが奥から顔を出す。
「ああ。ノブとは話が合いそうだよ」
「ねぇ、おじさん!」
おじさんと顔を見合わせながら笑顔で答える。
「あら。何だかお父さんにノブちゃんを取られちゃった感じだわ」
ぷうっと口を尖らせる華子さんはいつもより幼く見える。
「華子さん、私は華子さんもおじさんも大好きですから。あ、でも一番はおはぎ、いやあんこですね」
「確かに!」
華子さんとおじさんの声が見事に合わさる。その瞬間、三人で顔を見合せ、ひとしきり笑ったのだった。