第7章 甘味屋
華子さんとおじさんに別れを告げ、屋敷へ急いで戻る。甘味屋で思った以上に話し込んでしまったからだ。
屋敷に戻ると、実弥さんはまだ稽古中だったので、急いで昼食の準備をする。
稽古が終わった頃、ギリギリで出来上がった。
「危ない危ない。気を付けないとなぁ…」
「何が危ないんだァ?」
後ろを振り向くと、怪訝そうな顔で見る実弥さんがいた。
「えーっとですね、ちょっと買い出しで時間がかかりまして…お昼ご飯が間に合わないかと思ったんですけど、ギリギリ間に合って、危なかったなぁと…」
実弥さんから目線を逸らし、台詞を棒読みするかのように答える。
「そんなことか。そんなに食事の準備もきっちり時間通りにしなくていいぞォ。こっちも時間はまちまちだしなァ」
「いいえ、住まわせて貰ってるんですから、ちゃんと準備をする事は最低限の事です。できるだけ実弥さんが一人でいた時より心地好く過ごして貰いたいんです。私みたいな居候がいるだけで、今までの生活を壊しちゃってるんですから。だけど、私がしたいだけなので、実弥さんは気にしないでくださいね」
先程とは違い、実弥さんの目を見て話す。
「…ああ」
「昼食はどうしますか?お部屋にお持ちしていいですか?」
「先に着替える。それからでいい」
「はい。じゃ、着替え終わったら教えてくださいね」
部屋にすぐ持って行けるように準備していると、すぐに声がかかる。部屋に昼食を持っていき、着替えを回収する。
天気がいいので、先に洗ってしまえば乾くだろう。その足で洗い場へ行き、洗濯を済ませる。朝干した洗濯物はもうほとんど乾いている。
洗濯が終わり台所へ戻ると、実弥さんが食べ終わったお盆を持ってきてくれていた。
「わざわざありがとうございます。助かります」
「お前、食ったのかァ?」
「いえ、先に洗濯を終わらせてきました。今から頂きますよ。そうだ、実弥さん。今日おやつにおはぎ食べませんか?」
「何でだァ?」
「甘味屋のおじさんにおまけで一つ貰っちゃいました!せっかくだから、一緒に食べましょうよ。どうですか?」
「…ああ」
横を向いてぶっきらぼうに答えてはいるが、一緒に食べてくれるみたいだ。絶対断られると思っていたので、嬉しい限りだ。
実弥さんの都合のいい時に声をかけて貰うよう言い、昼食を持ち部屋に戻ったのだった。