第6章 お屋敷での生活
窓の外が明るくなり始めた頃、目が覚めた。今日は昨日と違って、天気は良さそうだ。身支度を整え、部屋を出る。その時に実弥さんの部屋を確認するのが習慣になってしまった。今日もまだのようだ。
お風呂に火を入れ、温める。水を追加していると、後ろから声がかかる。
「今日も早ぇなァ。風呂、入れるかァ?」
「ひゃあぁ!」
突然声をかけられ、ビックリして変な声が出る。
「さ、実弥さん?お帰りなさい。帰ってきたの、全然気づきませんでした。あービックリした」
「すげぇ声だなァ。ただ声かけただけなのに、驚きすぎだろォ」
「帰ってきているとは思ってなくて。今日やることを考えながらしてたので、全く気づかず…本当にビックリです。そろそろ入れますからどうぞ」
恥ずかしさから、風呂場を急いで後にする。顔は恥ずかしさで赤くなっている筈だ。両手で頬を触れば、手の冷たさが心地好い。
落ち着いたところで朝食の準備をする。実弥さんがお風呂から上がって、台所の横を通る時に声をかける。
「実弥さん、朝食はできたら、持っていっていいですか?」
「ああ、頼む」
急いで作り、お盆に乗せ実弥さんの部屋に向かう。部屋の前で声をかけ渡せば、次は自分が食べる番だ。その頃斉藤さんがやってくるので、一緒に食べる。毎日が同じように過ぎていく。
でも斉藤さんは今日で最後だ!私がへましない限りは。
「斉藤さんが来るのは、今日が最後だとは思えません。何だか明日も明後日も来てそうです」
「俺も来そうだよ。短かったけど、物凄く濃い時間だった気がする」
「私もそう思います。いいお兄ちゃんが出来ました!」
ニコニコしながら言う。
「出来の悪い妹を持つと、苦労するぜ」
斉藤さんも笑いながら言う。
「えー、意外とやればできる子ですよ、私」
「ははは、そうだな。最初は本当どうなることかと思ったぞ!」
「それは私も思いました。でも、斉藤さんのお陰です!ありがとうございました。今日が最後ですけど、よろしくお願いしますね」
「最後だから厳しく行くぞ!さぁ、無駄口はこれ位にして、仕事だ仕事!」
二人で笑いながら、一つ一つ仕事を片付けていく。時折、指摘されながらだが…。