第6章 お屋敷での生活
「ただいま戻りました」
先に帰っていた斉藤さんは、実弥さんの部屋のようだ。話声が聞こえる。
「どうだ、ノブは。二週間で何とかなりそうか?」
「はい。初日が余りにも酷かったので、二週間では足りないかと思いましたが、思いの外、覚えが良く、要領もいいので、あと二日もあれば大丈夫です」
「ほう」
「まぁ、大雑把ではありますが、一通りの事は一人でこなせるようになっております。記憶はなくしてますが、体は覚えているといった感じでしょうか。お屋敷で住むに当たって、不死川様にご迷惑をかけることはないと思いますが、ただ…」
「ただ?」
「方向音痴過ぎて、いまだに道順の紙を行き帰り見ないと帰ってこられません。見ていてもまだたまに間違えることもありまして…」
「何だァ、それはァ。紙を見てれば分かるだろうがァ」
「大雑把さが出るようです。確認忘れというか、自分を信じすぎているというか…」
「馬鹿だな」
「はい。そう思います」
えー!二人で納得?前もなかったっけ??
「馬鹿じゃありませんよー」
「一人で帰って来れたみたいだな、ノブ」
「いや、斉藤さんが置いていったんでしょ。茹で蛸だったり、固まった斉藤さんを引っ張るの大変なんですからねっ!」
「斉藤が茹で蛸ォ?」
「おい、やめろ。ここで言うことじゃないだろ、ノブ!」
「そうなんですよー、実弥さん。斉藤さんってすぐ茹で蛸になるんですよー。聞いてくださいよー」
「煩いっ!!」
斉藤さんが私の頭を叩く。
「っ、痛い。痛いですよ、斉藤さん」
「おい、何なんだァ。お前らはァ。痴話喧嘩は後でやれ」
「「痴話喧嘩じゃありません!」」
斉藤さんと声が合わさる。
「ふふふふふ」
「申し訳ございません、不死川様…」
私は笑い、斉藤さんは自分で言ったことに驚き、土下座をして謝っている。
「まぁいい。それで斉藤、ノブはいつまでお前の助けがいる?」
「あと二日で大丈夫かと」
「だとよ、ノブ。斉藤はあと二日しか来ないからなァ。しっかり教えて貰えよォ。それと、さっさと迷わずに行けるようになれ」
「はい。しっかり紙を見てれば大丈夫です!今日は一回しか間違えませんでしたし」
「いや、そこは威張るところじゃねぇ」
実弥さんが呆れ顔で言う。