第6章 お屋敷での生活
まだ濡れているが、許容範囲内だろう。
次は食事の準備だ。一応準備していたおにぎりを皿に乗せ、おはぎと一緒にお盆に乗せる。
部屋に戻り薬箱を準備する。だいぶ良くなっているかもしれないが、三日は放置していたのだ。せめて今日までは何が何でもしなきゃいけない。
そう考えていると、実弥さんはお風呂から上がってきた。廊下で呼び止める。
「実弥さん、一緒にお部屋に行ってもいいですか?」
「ハアアァッ?」
「お風呂上がりに腕の傷、手当てさせてください。嫌って言ってもしますよ。三日間はずっと放置してたんでしょ?さぁ、行きますよ!」
「ハイハイ。どうせ何言ってもするんだろ。さっさと終わらせるぞォ」
「やけに素直ですね。でもさせてもらえるなら、良かったです」
実弥さんは部屋に戻ると、部屋の真ん中に座り込む。私はその前に座り、横に薬箱を置く。
「じゃあ、手を出してください。良かったー。化膿してない。傷口も綺麗。もう大丈夫そうですね」
出された腕の傷口をゆっくり消毒しながら、観察する。そこで疑問が浮上する。
「そういえば抜糸はどうするんですか?しのぶさんにしてもらうんですか?」
「いや、今からする」
「えー!!実弥さんがするんですか?」
「いつもだァ」
器用に鋏を使い、糸を切っていく。糸を抜く作業も慣れているようで早い。
「すごい!あっという間ですね。あ!消毒しますね」
これで最後の消毒だ!もう傷口も綺麗だし、包帯は要らないだろう。
「はい。終わりました。実弥さん、手当てさせて下さって、ありがとうございました。お礼の品をお持ちします」
急いで台所からお盆に乗せたおにぎりとおはぎ、お茶を持ってくる。
「少し食べて寝てくださいね。実弥さん、お仕事、お疲れさまでした。じゃあ、私は部屋に戻ります。おやすみなさい」
笑顔で一礼し、部屋から出る。襖を閉めようと手をかけた時に、実弥さんが横を向きながら声をかけてくれる。
「ありがとうなァ、ノブ」
「いえ。こちらこそ。ゆっくり食べてくださいね」
満面の笑みで答え、ゆっくりと襖を閉める。自分がしないといけないことは、きちんとできた。
部屋に戻り夜空に呟く。
「無事に帰ってきてくれました。ありがとうございます」
だが、実弥さんが帰ったきた安心感からか、睡魔が襲いかかり、私は抵抗できず眠ってしまった。