第6章 お屋敷での生活
お風呂から上がり、髪の毛を乾かしていると、玄関が開く音がした。急いで行くと、そこには実弥さんが立っていた。
「お帰りなさい、実弥さん!」
「…あぁ」
「怪我とかしてません?お腹空いてないですか?それとも、お風呂ですかね?私、今入ったばかりなので、すぐに沸きますよ。どうします?洗濯物とかはありますか?預かりますから、出してくださいね」
「…お前は相変わらずだなァ。一人で喋りすぎだァ。雑魚鬼相手だからな、怪我はしてねぇ」
「あぁ、良かったぁ。実弥さん、強いから大丈夫だとは思ってたんですけど、やっぱり心配で…。でも、私が心配してても、どうしようもないんですけどね。本当良かったです。お帰りなさい、実弥さん」
「あぁ。とりあえず、風呂に入りてェ」
「分かりました。準備ができたら声をかけますね」
お風呂場へ急ぎ、火を入れる。一度沸かしているので、水を足してもすぐに沸く。
「実弥さーん、お風呂沸きましたよ」
襖の外から声をかけると、すぐに襖が開き実弥さんが出てくる。
「ノブ、髪乾かしとけよォ」
すれ違い様に頭に手を乗せられる。
「…はい」
何だ、これ。もの凄く嬉しいんだけど、もの凄く恥ずかしい。顔から火が吹き出そうだ。斉藤さんのことを茹で蛸って言ってるけど、今の私も同じだろう。耳まで熱い。
こんなことは久しぶりだ。久しぶり過ぎて、動悸が苦しくて仕方ない。
実弥さんは、なんでこんなことをさらっとできるんだ。
絶対タラシだな。自分で気づいてないなら、天然タラシだ。
スケベにタラシ…最強だ…
あまりにも衝撃が強すぎて、頭が混乱状態に陥る。
「落ち着け。落ち着くんだ、ノブ」
声に出す。とりあえず髪を乾かそう。その後はご飯とおはぎを準備しよう。あとは、実弥さんの傷の消毒。お風呂から上がってすぐの方がやりやすい。
何とか落ち着きを取り戻し、自分のすべきことを確認する。
髪を乾かさないと、他のことも進まない。肩にかけていた手拭いで、髪の毛を拭き始めたのだった。