第6章 お屋敷での生活
道場の掃除をしている斉藤さんの所へ行くと、呆れ顔で迎えられた。
「やっぱすごいわ。あの会話の後に、傷の手当てって…しかも無理矢理だったし。ある意味尊敬するわ、怖いもの知らずめ」
「そうですか?でも今日初めて実弥さんがありがとうって言ってくれたんです。私とっても嬉しくって!」
「不死川様が?!やっぱノブ、お前すげぇわ。何か次元が違う…」
「さぁ、掃除終わらせちゃいましょう!」
斉藤さんから指摘はあるが、だいぶ少なくなってきた。黙々とできる時間も増えてきた。
あとは片付けだけ、という所で実弥さんが顔を出した。
「おいノブ、行ってくる。ちゃんと言ったからなァ」
道具は置き、斉藤さんと二人で実弥さんの近くまで行く。
「いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃいませ。実弥さん、お帰りお待ちしています。お気を付けて下さいね」
実弥さんは玄関の方へ歩き出す。背中を向けたまま、手を肩の辺りまで挙げる。返事の代わりだろう。
今日は昨日と雰囲気が違っていた。指令の場所まで遠いからだろうか。お陰で普段通りに声を掛けれただろう。あとは無事帰ってきてくれることを祈るだけだ。
「さぁ、俺らは続きだな」
「はい」
実弥さんがいなくても、やることは変わらないのだ。実際、やることも多い。すぐに斉藤さんが帰る時間になった。
「俺はそろそろ帰る。じゃあな」
「今日も一日ありがとうございました!」
斉藤さんが帰れば一人だ。まずは藤の花のお香を焚く。それから自分のペースで過ごすと、あっという間に寝る時間だ。夜空に向かって祈りを捧げる。
『実弥さんが無事帰ってきますように』
怪我はして欲しくない。鬼は倒して欲しい。でも、上弦の鬼には会って欲しくない。早く帰って来て欲しい…
願いは尽きない。でも、一番の願いは無事ここに帰ってきてくれること。何度も何度も祈り続ける。
布団に入ってからも、祈り続ける。眠りにつくまで…。