第6章 お屋敷での生活
【実弥side】
外の明るさで目が覚める。今日は少し寝過ごしてしまった。耳をすますが、どこからも声がしない。台所に行くと、食事が準備してあった。
「買い物かァ」
寝過ごしたことに気づかれずにすみ、少しホッとする。食事を食べていると、鴉が指令を持ってきた。ここからだと、往復に時間がかかる。一日では帰って来れない。頭の中で予定を立てながら、準備を始める。
昼前に二人は帰ってきた。案の定、買い物だった。
「斉藤、ノブ、鴉から指令がきた。準備が終わり次第発つ」
「承知致しました。お帰りは?」
「二、三日後」
「準備するものはございますか?」
「いや、ない」
「承知致しました」
斉藤は頭の回転が早い。そして、無駄なことは一切言わない。だが、こいつは無駄なことばかりだ。
「実弥さん、じゃあ行く前に傷の手当てをさせてくださいね」
「はァァ?大丈夫だって言ってんだろォ!」
怒鳴りながら言うが、全く意に介さない。
「いや。ダメです。昨日、言いましたよね?ちゃんと手当てしないと、治りが悪くなるんです。二、三日もいないなら尚更です!すぐ準備して、お部屋に行きますから。逃げちゃダメですよ」
「誰が逃げるかァ」
早々に部屋に戻り、襖を閉める。すぐにあいつは薬箱を持って部屋の前まで来た。
「実弥さん、入りますよ」
「ダメだァ」
「諦めが悪いですね。消毒が痛いから嫌なんですか?子どもみたいですよ」
「誰が子どもだァ!」
こいつは昨日から何度も子ども扱いしやがる。怒りで、怒鳴りながら襖を開けた。
「さぁさぁ。早く行かないと行けないんでしょ?すぐに終わりますから」
そう言いながら、あいつは俺の横をすり抜け、部屋に入り込む。