第6章 お屋敷での生活
そこへ、店先の掃除を終わらせた華子さんが戻ってくる。
「あ、お父さん。ノブちゃんと話してたのね」
「君が華子が言ってたノブちゃんか。じゃ、そこにいるのが斉藤くんかな。夫婦漫才、俺も見たかったぞ」
「華子さんのお父さん、私達は夫婦でもないし、漫才もしてないんですよ!華子さんも変なことをお父さんに、言わないで下さいよ。斉藤さんも何か言ってくださいよ!」
「…斉藤義雄と申します」
「えぇ!何で自己紹介?ってか、斉藤さん、義雄さんって言うんですね。知らなかったぁ。何で私には教えてくれなかったんですか?」
「…煩いっ!」
その一言と共に、斉藤さんから頭を叩かれる。
「えぇー!私何か変なことを言いました?何で叩かれるんですか?斉藤義雄さん」
「煩いっ!」
また頭を叩かれる。
「ははははは。こりゃ面白い」
「ふふふふふ。そうでしょ、お父さん。」
華子さんとお父さんは大爆笑だ。何がそんなに面白かったのだろうと、首を傾げながら、二人が落ち着くのを待つ。
「楽しんで頂けたようで、何よりです。何が面白かったのか、全く理解できてませんが…」
「ふふふ。ごめんね、ノブちゃん」
「笑わせてもらったよ。さぁ、おはぎだ。待たせたね」
「ありがとうございます!また明日もきますね、華子さん、お父さん」
「待ってるわね。斉藤さんじゃなくて義雄さん、今日も来てくださってありがとうございました」
「…は、はい。こちらこそ…ありがとうございます」
斉藤さんはいつもより小さな声だ。
名前で読んでもらった瞬間、茹で蛸になった斉藤さんは見物だった。