第6章 お屋敷での生活
「お待たせしました。ありがとうね」
「お姉さん、私達のこと覚えててくれたんですね。嬉しいです!」
「ふふふ。だってあなた達、夫婦漫才みたいだったもの。面白かったわ。仲が良いみたいだけど、恋人同士かしら?」
大変だ!誤解を解かねば!!
「いえ、全く違います!友達のお兄ちゃんです。私が方向音痴なので、覚えるまで道案内しもらってるんですよ」
「そうなの。間違えてごめんなさいね」
「大丈夫ですよ。あ!お姉さんに一つお聞きしてもいいですか?」
忘れるところだった~!
「お名前何と仰るんですか?私はノブと言います」
「私は華子と言うのよ。よろしくね、ノブちゃん」
「こちらこそよろしくお願いします、華子さん。ちなみにあのお兄ちゃんは、斉藤さんです」
「斉藤さんも来てくださってありがとうございます」
「……はい」
斉藤さんは華子さんに声をかけられ、顔が真っ赤で、茹で蛸のようだ。
「華子さん、また来ますね」
「ありがとう。待ってるわね、ノブちゃん、斉藤さん」
おはぎを持ち、店から出る。茹で蛸状態の斉藤さんを引っ張りながらだ。
店を出て、声をかけるが、まだ惚けたままだ。
「斉藤さんっ!」
今度は勢いよく腕を揺すり、声をかける。そこでやっと斉藤さんも惚けていたことに気付く。
「お姉さんのお名前、華子さんって言うんですねぇ。斉藤さんの名前も覚えてくれてた筈だし!一歩前進ですね」
笑いながら声をかける。
「何も言うな…帰るぞ」
未だに茹で蛸状態の斉藤さんは、帰り道を教えることを忘れ、さっさと屋敷に帰ってきてしまった。
「斉藤さん、帰り道教えてくれるって言ってたじゃないですか!帰るの早すぎです。私、ほぼ走りましたよ」
息があがったまま訴える。
「すまん、すまん!ちょっと何も考えられなくてな…でも今から道順教えてやるから。な、許してくれよ」
「分かりました!でも、分かりやすく教えてくださいよ」
筆と紙を準備し、斉藤さんが教えてくれた道順を書く。それを自分なりに分かるように書きなおせば、
大丈夫そうだ。あとは実践あるのみ!
「明日は一人で店まで行けたらいいけどな」
さっきまで茹で蛸で可愛らしかったのに、いつもの調子に戻った斉藤さんがニヤニヤしながら言うのだった。