第6章 お屋敷での生活
それから少しして、斉藤さんがやってきた。
今日もまた昨日同様、たくさん指導されてしまう。昨日と違うのは、今日はまだ実弥さんが寝ているから小声、ということ位だ。
「それにしても、昨日と言ってること、ほぼ変わらないじゃねぇか」
「そんなすぐに性格は変わりませ~ん」
「なんだ、その言い方は。全くやる気が見えん」
「やる気はありますよ!ただ、この大雑把な性格は手強くって」
「なかなか手強いな」
「そうでしょ?でもがんばりますから、まだまだ指導してくださいね」
「ビシバシとな!」
「お手柔らかに~」
斉藤さんとは馬が合うのだろう。二日目にして、お互い気を遣わずにいた。
「斉藤さ~ん。今日もお買い物、行きましょうよ!」
「はぁ?昨日行ったから、今日はいい」
「えぇ~!!行きたいです。斉藤さんも甘味屋さんのお姉さんに会いたいでしょ?」
お姉さんを出したら、絶対行く筈だ!
「…そんなに、買い物に行きたいなら、連れてってやらないでもない」
「やったぁ!」
「でも昨日一回行ったから、道は覚えただろう?今日はノブが自分で行くんだ。俺は一応後ろからついて行ってやる」
何て事を言うんだ、この人は。
「えぇっ!!無理です。一人じゃ行けません!方向音痴なんですもん。たどり着く自信がないです…」
「それなら、尚更だ。二週間で覚えなければ、お前は買い物に行けない」
ニヤリとしながら斉藤さんが私を見る。
「そうですけど。今日だけは一緒に行って下さい~」
「ダメだ!俺は厳しい!」
楽しくお買い物に行く筈だったのに、まさかの地獄に突き落とされる。斉藤さんは知らないのだ。私が本当にビックリする位の方向音痴だってことを。
私の一番の難関は料理じゃなかった。