第23章 岩柱のお屋敷
台所に向かい、お昼ご飯を作る。
玄弥くんと悲鳴嶼さんに渡して、自分はまた台所で食べる。
その後は掃除をしつつ、夜ご飯を作る。
悲鳴嶼さんと玄弥くんを見送ってから、お風呂に入って就寝。
翌日はまた朝ご飯を作る。
掃除、洗濯、調理などの家事をこなしつつ、時間を見つけては買い物と縫い物をして…
ひたすらこれを繰り返すと、毎日がいつの間にか過ぎていく。
実弥さんのお屋敷と殆ど変わらない毎日だ。やっている事は変わらない。
でも、実弥さんがいない。
玄弥くんも悲鳴嶼さんも、一緒に住んでいれば、少しずつ仲良くなってきて。ここで過ごすのも慣れてくるのだけど。
何だか、物足りない。
実弥さんのお屋敷で過ごしていた日々は、何て幸せな毎日だったのだろうと、今更ながらにその有り難さに気づく。
実弥さんの面影を求めて、カラカラと回る風車を眺めながら、毎日を過ごす。
日々の家事をこなしながら、実弥さんに対しての行動も起こしていた。お館様からの言葉が、私の行動の根拠というか、自信というか、後ろ盾となった。
それがこの手紙だ。
読んでくれているかは分からない。何とか繋がっていたいという私の気持ちを形にしているだけ。一方通行だ。
返事は期待していない。
まぁ爽籟に伝言するって方法はあるけど。
実弥さんは絶対に返事はしないと分かっているから。私からの一方通行でいい。どこかでこの一方通行が、何かのタイミングできっかけになるかもしれないと信じて、送り続けている。
「マタ?返事ナンテナイノヨ。何デ書クノヨ?モウ風柱ノコトナンテ、放ッテオケバイイノニ」
木蓮の言葉である。
グサリと刺さるけど、私のことを心配しての言葉だから、敢えてそのまま受け取る。
「放おっておけないのよ。ごめんね、木蓮。よろしくお願いします」
笑ってそう答える。
自分自身にも言い聞かせるかのように。
「ソンナ泣キソウナ笑顔デ言ワレタラ、モウ何モ言エナイジャナイ」
捨て台詞を残して、飛び去っていく。
そんな顔をしていたのか。ぷにぷにと頬を摘んでみるが、見える訳ではないから分からない。
パチンッ!
感傷に浸っている場合じゃない。
顔を叩いて気合を入れ直し、屋敷の中に戻った。