第23章 岩柱のお屋敷
ここでの仕事はある程度分かった。
やる事は実弥さんのお屋敷と殆ど変わらない。やり方とかが少し違うだけ。何とかやれそうだ。
「ありがとうね、玄弥くん。また分からなくなったら、ごめん。教えてね」
玄弥くんにお礼を言えば、眉間に皺が寄る。お礼を言っただけなのにと思いつつも、誰かさんと変わらぬ対応に何だか安心を覚える。
「何だよ、まだ何かあんのかよ?それと、その顔。ニヤニヤすんな。気持ち悪りぃな」
どうも顔が緩んでいたようだ。急いで、引き締めてみたものの、余計に眉間に皺が寄って、顔を背けられてしまった。
どことなく似ているものだから、気づかないうちに玄弥くんに実弥さんを求めてしまっていたようだ。
ダメだダメだ。これじゃどちらにも失礼だ。
パチン!
「よしッ!」
今度はちょうどいい力加減で、ついつい声が出てしまう。
「おいおい、誰もそこまでしろとは言ってねぇ!」
焦ったようにこっちを向いて、早口で捲したてる。
あぁ、ちょっとタイミングを間違えた。
「ごめん、ごめん。玄弥くんのせいじゃないよ。大丈夫。気持ちの切り替えとか、気合を入れ直してるだけだから。本当に気にしないで」
笑ってそう言ったものの、若干ジト目で、返事をすることもなく、凝視され続ける。
あんまり信じてなさそうだ。
まぁいい。どう思われようと、正直に答えてるんだから。
未だに何も喋らず見続ける玄弥くんのことは一旦そのままにして、一度頭を整理する。
「よし、まずは昼ご飯だね。何か食べたい物とかってある?」
質問された本人は、突然の質問に、目を大きく見開いて驚いている。
「好きな物とか、あったら教えてね。悲鳴嶼さんって、何が好きなのかな。ってか、昼ご飯の材料ってあったっけ?ごめん、玄弥くん。昼ご飯作ってくるね。またできたら声かけるから。ありがとね〜」
そう言って、台所に向かう。
「…何なんだよ。突然話が変わりすぎだろ」
そんな声が後ろから聞こえた気がしたけど、まぁ気にしない。