第23章 岩柱のお屋敷
そろそろ、お館様は動けなくなってくる頃だ。
遊郭の最後の方では吐血してたし、刀鍛冶の里の後はもう柱合会議に出れなかった。
自分では動けなくなっているという思いもあるから、私に動いて欲しいとの気持ちも入ってるのではないかと、推測してしまう。
あぁ、ヤバい。
色々と考えてしまって、糸が切れて涙が溢れてきそうだ。
一度下を向いて、グッと下唇を噛む。と、同時に、両手にもグッと力を込めて握りしめる。
うん。何とか切れずに済んだ。
力を抜くと同時に、ふうっと息を吐き出す。それから、顔を上げて、悲鳴嶼さんを見て、言葉を吐き出していく。
「…お館様らしいお言葉ですね。でも、その言葉だと、誰かに聞かれたら、勘違いしちゃう人が増えるような気がしますけど。
悲鳴嶼さん、ありがとうございます。何をしたらいいのか、まだ今は全く分からないんですけど。とりあえず、がんばります。
あと、私、前もお話しましたけど、記憶が特殊なので、もしかしたらおかしな行動とか不快に思われる様な事をしちゃうかもしれないので、そのときは遠慮なく指摘してください。よろしくお願いします」
「分かった」
「では、朝ご飯準備しますね。こちらにお持ちしますか?」
「いや、取りに行くから、準備しててくれ」
「はい。それでは、失礼します」
そう言って立ち上がり、部屋を後にする。
何度か間違えながら、何とか台所に辿り着き、まずは味噌汁を温める。お盆にお握りを載せた所で足音が聞こえてきた。
「早かったか?準備はできているだろうか?」
「大丈夫ですよ。お味噌汁を入れれば、準備完了です。はい、どうぞ。お口に合うかちょっと不安ですけど。お握りは残して貰って構いませんので。ちょっとどのくらいの量を食べられるのか分からなくて」
「分かった。では、頂いていく」
「ごゆっくりどうぞ。食べ終わって私がいなかったら、ここに置いて下さいね。後で片付けますんで」
「三井がいた時はお願いするが、いなければ自分で片付ける。今まで通りだ」
「はい」
今まで通り。
少しだけそこの語彙が強かった気がする。