第23章 岩柱のお屋敷
洗濯をしてから、掃除をする。
廊下だったら当たり障りはないだろうと判断して、ひたすら拭いていく。
「ん、三井か?」
ちょうど厠前辺りの廊下を拭いていた所で、後ろの方からそんな声が聞こえた。頭を上げて振り向けば、こちらに向かってくる悲鳴嶼さんが目に入る。
「おはようございます。すみません。昨日からお世話になっています」
急いで立ち上がって、深く頭を下げる。
「その事は聞いていたから、いい。三井はこんな所で何をしているんだ?」
少しだけ冷ややかな声で、責めるような気がするのは、気の所為ということにしておこう。
だけど、ちゃんと玄弥くんに許可を取ったってことは伝えておかなければ。
「すみません。あまりにすることがなくって、掃除をさせてもらってました。あ、ちゃんと玄弥くんに聞いてますから、変な事はしてない筈です」
「することがない?何かあるだろう」
「玄弥くんにも言われましたけど。何とか思いついたのが、家事でして」
「…」
表情は変わらないけど、うん。間違いなく呆れられている気がする。もしかして残念な子を見る様な目をされてるかも…
とりあえず謝っておこう。
「勝手をしてしまってすみません」
「いや、掃除はしなければならないし。助かるのだが」
「良かったです。あ、朝ご飯はどうされます?お味噌汁を温めたらすぐに食べられますけど」
「…お前は料理もしたのか?」
自ら墓穴を掘ってしまった気がする。
「あぁっ。本当に勝手をしてすみませんッ!あまりにもすることがなくって。料理はお世話になるお礼の意味でも、玄弥くんに無理言ってさせてもらったんです。私、料理とか他の家事とかも、全くうまくはないんですけど、他にできる事なくって。本当にすみません」
途中で、何度も何度も頭を下げながら、話していく。まぁ、言い訳を並べていっただけだけど。
「…私も玄弥も料理はあまり得意ではないから、助かるが。三井は大変ではないのか?ここへ来たからと、無理はしていないか?」
どうも責めていたというよりは、心配されていたのかもしれない。
どうしてこうもこの世界の人達は、優しい人ばかりなのだろう。