第23章 岩柱のお屋敷
「もしかして、木蓮、私が追い出されたことで、実弥さんに対して怒ってる?」
確かめるように聞けば、羽をバサリと広げて、捲し立てるように答えが返ってきた。
「ソウヨ。ソレ以外ニ何ガアルノヨ!本当、子ドモヨ、アイツ!嫌ナコトヤ都合ノ悪イコトハ聞ク耳持タナインダカラ!」
「嬉しいなぁ。木蓮がそんな風に怒ってくれるなんて。でも、本当に実弥さんは優しいんだよ。まぁ、あれじゃ勘違いされやすいとは思うけど」
「大体、ノブモノブヨ。アイツノドコガ優シイノ?全ク分カラナイワ」
「ふふっ。分かりやすいようで分かりにくいからね。だから、あまり嫌わないでいてあげてね」
「無理ネ!」
「ハハハハッ!正直ね。でも木蓮らしい」
「ソウ?マァイイワ。アイツヨリモ、ノブ、アナタヨ。絶対ニ無理シナイノヨ。何カアッタラ、スグニ私ヲ呼ンデ。私ハノブノ近クニイルカラ」
「本当にいつもありがとうね」
その言葉に、木蓮はコクンと頷くと、大きく羽を羽ばたかせ靄の中に消えていった。
そんな仕草を見て思う。本当に木蓮はツンデレだ。
ふうっと大きく息を吐き出せば白い。
実弥さんの屋敷のある町中と違って、悲鳴嶼さんの屋敷は山の中だ。朝晩の寒さが違う。
「寒い、寒い」
肩をすぼめながら急いで屋敷に戻る。
こっちの世界に飛ばされた時からもう季節が進んでいる。ちょっとしたことが、実弥さんのお屋敷ではないことを、私に突きつけてくる。
自分の気持ちに鈍感にならないと。
一度目を閉じて、大きく息を吸い込む。
こんな事でいちいち落ち込んでいたら、一日で神経をすり減らしてしまって、使い物にならなくなる。
大丈夫大丈夫。
どうにかなる。
良い方に進んでいく。
自分に暗示をかけるように、良い言葉を並べて繰り返す。
大丈夫大丈夫。
きっとうまくいく。
ふうっと目一杯吸い込んだ息を吐き出してから、目を開ける。