第23章 岩柱のお屋敷
「ノブ」
どこからか、呼ばれる声がする。くるりと見回したけれども、誰もいない。
「ノブ。聞コエテル?私ヨ、木蓮」
あぁ、何ですぐに気づかなかったのだろう。
戸を開ければ、すぐに木蓮が立っていた。
「木蓮!おはよう。昨日はありがとう」
しゃがみ込んで木蓮に声をかける。
「ソレガ私ノ仕事ヨ。気ニシナイデ。早速ダケド、オ館様ニ伝テキタワ。オ館様カラハ、岩柱カラ今後ノコトハ聞クヨウニ、ダソウヨ。朝一デ岩柱ハ呼バレテタカラ」
「そっか。とりあえず悲鳴嶼さんが帰って来るのを待つしかないね。わかった。木蓮、本当にありがとうね」
「気ニシナイデッテ言ッテルデショ。ア、アトハ風柱ノ情報ハナイカラ、元気ニシテルンジャナイ?」
私の事をよく分かっている。言ってもないのに、実弥さんの事を教えてくれた。何て優しい人、いや鴉だろう。
「教えてくれてありがとう。良かった。何もないってことは、怪我とかもしてないだろうからね。まぁ、何かあっても、爽籟がいるから大丈夫だけどね」
「本当ニアンナ男ノドコガイイノヨ」
鴉だから、表情を変える事は殆どないのだけど、話していると割と喜怒哀楽が分かる様な気がする。
今は間違いなく呆れた様な表情をしている。
木蓮が言う事も分かる。
まぁ、よく聞く台詞だ。見た目も口も悪い人だし、本の中では炭治郎達の目線から見るから、第一印象は悪すぎだ。
――不死川実弥のどこがいい?――
何度となく聞かれた。
その度に優しい人だよって、伝えた。
他にもいい所を説明したけど。なかなか伝わらなかった。
「木蓮は、実弥さんに対して辛口だよねぇ」
そんな記憶から、答えを濁す。
「ノブヲ追イ出シタデショ。話モ全然聞カナイシ。何カ思ウトコロハアルンダロウケド、少シクライノブノ話ヲ聞イテモイイデショウモ。ナノニアイツッタラ」
だけど、思っていた答えと少しだけ違った。
実弥さんが嫌いだから、という理由ではなくて、私に対して何かしたからという印象だった。