第23章 岩柱のお屋敷
ふと、目が覚めた。
天井が違う。部屋も違う。
…ここはどこ?
飛び起きて、やっと悲鳴嶼さんの屋敷だと思い出す。
周りを見渡せば、まだ真っ暗だ。
でも、もう目が覚めてしまった。二度寝する気も起きない。
グッと大きく伸びをしてから、動き出す。布団をしまって、身支度を整える。エプロンをつけてから、台所に向かう。途中で道を間違えて厠に行ってしまったので、ついでに用を足したり顔を洗ったり。
そんなこんなで何とか台所に到着した。
「とりあえず朝ご飯。悲鳴嶼さん、どれくらい食べるんだろ。まぁ、食べなくても昼に回せるように取り置きできるようにしとこうかな」
口に出しながら、そして手を動かしながら。
実弥さんのお屋敷にいる時と変わらない。
変わるといえば、人数が三人分に増えただけだ。だからか作り終わるのは早かった。
実弥さんのお屋敷だったら、掃除だったり洗濯だったりと、何かしらやることがあったけど。ここでは特にない。とりあえず手持ち無沙汰になった私は、何となく食材の確認を始めた。
置いてあった野菜は、気にしなければ今日にでも使い切ってしまいそうだ。そろそろ新しい食材も欲しい、と思った所で、私の所在はまだここと決まっていた訳では無いことを思い出す。
「とりあえず、悲鳴嶼さんに会ってからかな。お館様からも、今日にでも何かしら連絡があるだろうし。それからかな」
「お前、本当に独り言が多すぎねぇか?」
「あ、玄弥くん。おはよう。ごめん、煩かったかな」
「煩くはねぇが」
「ご飯、できてるよ。もう食べる?」
「あ…あぁ」
「じゃ、準備するね」
すぐに玄弥くんの分の朝ご飯を準備する。と言っても、ご飯とお味噌、昨日の残りの煮物を少しと漬物だ。振り向けば、玄弥くんはそのままの場所にいた。待っていたのだろう。
「おまたせ。簡単な物だけど。これくらいの量でいい?」
「…あぁ」
「ご飯とお漬物はお替りあるから。多分お味噌汁は残らないけど」
そう言いながら、お盆を渡す。
「ん」
短い返事を残して、部屋に戻っていった。
まだ玄弥くんとはうまくコミュニケーションが取れないなぁ。なんて事を思いながら、その背中を見送った。
私もその後すぐに朝食を食べたのだけど、結局、部屋まで戻らず、昨日と同じ場所に腰を下ろして、食べたのだった。