• テキストサイズ

【鬼滅の刃】あなたに逢いに 

第22章 兄と弟


部屋の奥で腰を下ろす。洗った髪の毛を手拭いで拭きながら、周りを見渡す。大きな部屋で、何だか落ち着かない。
腰を下ろしたものの、すぐに立ち上がって下着を干してみたり、風呂敷を開けて荷物を整理したりと、動いてみる。布団まで敷いてしまえば、もうすることはない。

「結局追い出されちゃったなぁ」

風車を手に取る。たけど、動くことはない。

ふうっと息を吹きかければ、その分だけカラカラと音を立てて回る。
止まりかけたら、息を吹きかけ、カラカラと回る風車を眺め続ける。

風車は実弥さんだ。
全部の風を受け止めて動く姿は、結局全部自分で背負い込んで動く姿に重なる。

「実弥さん、大丈夫かなぁ」

柱だから強いし、身の回りの事も自分でできる。生活する上では今までに戻るだけだ。大丈夫だとは思う。

だけど、本当に大丈夫だろうかと心配になる。実弥さんだって、一人の人間だ。
短いけど、一緒に生活して、本の中の登場人物ではなく、この世界でちゃんと生きている人だと思い知らされた。

何だかんだで優しい人だ。
優しい人だからこそ、自分で決めた事をやると、突き進んでいく。そこに自分の気持ちや自分への評価は優先されない。
自分の事は後回しというか、ほとんど考えない。だから、大丈夫なのだろうかと思うのだ。

けれども、そうは思っても、追い出されてしまった私には、できることはない。
多分もう、信用もしてもらえないだろう。

考えないようにしていた今日の事を思い出す。

想像していたけど、やっぱり全く話を聞いて貰えなかった。
あそこまで話を聞いて貰えないなんて、全く予想していなかった。完全に拒否されてしまった。

今考えれば、私に驕りがあったと思う。
私の言う事なら少しは聞いてもらえるかもしれないと思っていた。
実弥さんと生活する中で、他の人よりも距離的に少し近くなったと勘違いしていた。何だかんだ私のやりたいことをさせてくれていたのは、実弥さんの優しさだ。
駄目な事は駄目だと言う人だから、私が言ったわがままは、まだ許容範囲だったのだろう。

そんなやり取りで、私は、簡単に勘違いしてしまった。

絶対に間違えてはいけないことを、私は間違えてしまったのだ。


/ 520ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp