第22章 兄と弟
すぐに食べられるように、おかずを皿に盛っていれば、玄弥くんが戻ってきた。
「ありがとう。玄弥くん、もう食べられるけど、どうする?」
実弥さんの屋敷では、台所で食べられるようにしていたけど、ここには椅子はない。
「あぁ、流石に腹が減ったからな。お前も腹減ってるんだろ。食べろよ。食べたら風呂だからな」
そう言いながら、手慣れた手つきでお盆に皿や茶碗を載せて、そのまま部屋に戻っていった。
私は部屋まで戻れる自信がないので、屋敷に上がる廊下に座って食べた。自分で作ったから、実弥さんの屋敷で食べていた物とほとんど変わらない筈なのに、何か味気がない。なかなか箸が進まないが、お腹は空いているから、何とかお腹に収める。
「ごちそうさまでした」
お腹がいっぱいになった気もしないし、美味しかったという気持ちにもならない。何とか生きるための栄養をこの身体に与えた、そんな印象だ。
今日は止まってしまえば、動けなくなる。
そんな危機感から、すぐに動き出す。片付けと、明日の朝食の準備もある程度進めておく。
「もう食べ終わったのかよ?それは明日の朝の分かよ。そんな急がなくてもいいんだけどよ」
声がした方を振り向けば、玄弥くんが眉間に皺を寄せながらこちらに向かってきていた。
「ご飯食べ終わって、何もすることがなくてね。実弥さんのお屋敷でも、これくらいの事はしてたし。好きにやってることだから、気にしないで」
「お前がいいならいいけどよ」
「したら駄目な事とか、何かあれば、その都度教えて貰えると助かりますので、お願いします」
軽く頭を下げれば、苦々しそうな顔をする。
「その口調は、気持ち悪いからやめろ。どうせ明日までだ。やる事ないなら、風呂に入ってこい」
「いやいや、玄弥くんからでしょ」
どう考えても、この時代、男性から入るのではないだろうか。私はここに急に来たのだし、後からのほうが掃除もしやすい。
そんな考えが伝わったのか、腕を組んで大きくため息を一つつく。