第22章 兄と弟
「こんなに広い部屋…分かった。ありがとう。玄弥くんは今日は鬼狩り行くの?」
「いや」
「そう。お腹すいてない?私、何か一気にお腹空いてきた。良かったら、ご飯作るけど。台所使わせて貰っていいかな?」
「…いいのかよ?」
私の提案に分かりやすく驚いた顔をしている。少しだけ空いた間は、玄弥くんの中で考えたのだろう。それでも任せてくれるのは、料理は苦手だったり面倒だったりするのかもしれない。
何とか役にたてそうだ。
「うん。泊まらせて貰うんだから、作らせて。私ができる事って本当に少ないから。実弥さんが食べてくれてたから、大丈夫だと思うし。取りあえずここに荷物置かせてもらうね」
「あぁ」
背負っていた風呂敷を下ろす。料理をするならと、持ってきたエプロンを取り出す。
「さあ、行こ。ってか、台所まで連れてって」
「アッ?!」
私の言葉に本当に分かりやすく反応してくれる。すぐに顔に出るのは、兄弟だからか。
「全く場所が分からないから、よろしくね」
「何なんだよ、お前は」
「ただの方向音痴よ~」
「クソッ!お前、本当に面倒くせぇ!」
そう言うと、ドスドスとした音を鳴らしながら、進み始める。ガシガシと頭をかく姿は、やっぱり実弥さんそっくりだ。そう思ったと同時にグッと胸が締め付けられる。まだすぐには気持ちを切り替えられそうにない。
「そう?ごめんね」
そう言って気持ちには蓋をして、遅れまいと後を追う。
いくつか曲がれば先程入ってきた台所に着いた。だけど一人であれば、やっぱり迷う自信しかない。
エプロンをつけながら、台所を見渡す。1箇所に野菜が無造作に置かれていて、いつも使うであろう鍋や菜箸等も洗ったままの状態だ。
玄弥くんが苦手なのが何となく分かった。
「玄弥くんは食べれない物とか苦手な物ってある?」
「…ない」
「了解!ここにあるやつは何でも使っていいのよね?取りあえず私が作れそうな物、作るけど、文句は言わないでね」
「あぁ」
玄弥くんを見上げながら、念を押しておく。私も料理はあまり得意な方ではないからだ。