第22章 兄と弟
「待ってくれよ。こいつは、関係ない。俺だけ出ていけば…」
「ノブもだァッ!勝手にこいつを入れやがった。信用ならねェ。そんな奴をここには置いてられねェんだよ」
「でも、ノブは…」
「煩いッ!さっさと出ていかないのなら、無理やり出す。それとも、再起不能にしてやろうかァ。隊も出ていけるし、一石二鳥だなァ」
そう言いながら、ジリジリと前に出てくる実弥さんは、本気なのだろう。
玄弥くんを庇う形でまた前に出れば、一気に実弥さんの威圧感が襲いかかってくる。
「実弥さんッ。私はすぐに出ていきます。居候させて頂いていたんです。家主の実弥さんが言われるなら、仕方ありません。ですけど、実弥さん。できれば玄弥くんの話を少しだけでも聞いて貰えませんか?」
何とか話を聞いてもらえないかと、声を振り絞った。
「断るッ!」
一考もすることもなく、即座にそう答えられる。
「じゃあ、ノブはそのままここにいていいだろう」
また玄弥くんが私を庇うように、前に出てくれる。
実弥さんに話しを聞いてほしい筈なのに。
玄弥くんは何度も言葉と行動で、私の事を庇ってくれている。
あれだけ塩対応だったのに。やっぱりこの二人は優しいんだなぁ。
一瞬、意識が飛んだかのように、別の事を考えていた。 あまりの緊張に、防衛本能が働いたのかもしれない。
実弥さんの言葉に意識が引き戻される。
「ダメだァ。信用ならねェ奴を置いてられねえんだよ。一度言えば分かるだろうがァ。ノブ、さっさと出ていけ、今すぐにだ。お前は、余程俺に殺られたいんだなァ」
あぁ、もう無理だ。
その言葉が私の埋め尽くしていく。