第22章 兄と弟
実弥さんも玄弥くんも、自分の気持ちに真っ直ぐだし、周りから何と思われようと自分の道を行く。
だからこそ素直じゃない部分がある。
もう少し楽な生き方もあるのだろうとは思うんだけど、そこは曲げれないんだろう。
少しでもその辺りが柔軟に対応できたり、素直になれたら、お互いにとってもいいんだろうけど。
だけど、そんな風になってしまったら、不死川兄弟らしくないのだ。
素直で、みんなに振り回されてワタワタしている実弥さんと玄弥くんを想像して、笑いが込み上げる。
うん、らしくない。
全部終わった後なら、いいのかな。
だけど、全部終わる前に、どうにかしないと。
答えの出ない問題を考えていれば、時間が経つのは早い。
もう、ご飯が炊き上がってしまった。
炊き上がりのご飯のいい匂いをすうっと大きく吸い込む。これだけで、幸せになれる。
ちょっとだけ一休み。そう思って振り返れば、頬杖をついた玄弥くんと目が合った。すぐに反らされたけど。
お茶を湯飲みに注ぎ、玄弥くんの前に座る。既に温くなっていたので、一気に飲み干す。
「はぁ、おいしい」
ゆっくりと湯飲みを机に置く。顔を上げれば、玄弥くんと視線が交わる。
「お前、やる事なす事、想像を超えてくるな」
「そう?普通だと思うけど」
最初の頃の刺々しさは少しだけ引っ込んだけど、何だか突っかかってくる。興味というか、関心を持ってくれてるんだから、無視されるよりはいいんだけど。
そんなに変なことをしているつもりは、全くない。
「お茶も一気に飲み干すなんて、女がすることじゃねえぞ」
その一言で、少しだけ理解した。
女性らしさや、女性の魅力的なものは、おばちゃんの私にはない。まぁ、若い時もそんなになかった。自分を偽る方がきつかったし。
「ああ、誰も私の事なんて見てないでしょ?私に女らしさを求められても、無理よ。基本大雑把だし、記憶もないし」
「いや、記憶は関係ねえだろ」
何でそんな事を言うのだろうか。
そう思った時に、一つの考えが頭を過った。