第22章 兄と弟
そんな事を考えながらも手は動かし続けていたので、すぐに籠の中の洗濯物は全部畳み終わる。
自分の分は自室に持って帰り、実弥さんの分は籠に入れたまま実弥さんの部屋に置いておく。
次はご飯ご飯。
実弥さんの稽古もそろそろ終わるから、お茶とおはぎも準備しなきゃ。
火を起こしながら次にすることを思い浮かべる。
おはぎを準備しておこうと振り替えれば、頬杖をついて眉間に皺を寄せた玄弥くんと目が合う。
「ん?どうした?お茶のお代わりいる?」
「お前さ、独り言多過ぎないか?」
玄弥くんの発言に、頭の中にはハテナマークが浮かぶ。
「えっ?今は喋ってないでしょ?」
そう言えば、これでもかというほど、眉間に皺が寄る。
「嘘を言う理由がどこにあるんだよ?お前、喋ってたぞ。ご飯とか、お茶とおはぎとか」
「えぇっ!本当に声に出てた?」
あまりの衝撃に声が大きくなる。自分の事が信じられず、釜戸から離れ、玄弥くんの前で机に手をついて聞く。
「阿呆ッ!何度も言うが、俺がそんな嘘ついて何の得があるんだよ。お前、ブツブツ言ってて、怖えーぞ」
かなり睨まれているけど、それ所ではない。
頭で考えてたと思っていた事が、無意識のうちに声に出してたって事だ。ヤバい。
「あー、独り言が多いのは分かってたんだけど。まさか無意識に出てたってことよね?」
「いや、俺に聞かれても知らねぇよ。でも、ブツブツ言ってたのは間違いねぇ」
自分の中で消化するために出した疑問は、バッサリと切られてしまった。でも、玄弥くんが言う通りだ。
只でさえ玄弥くんから見て私の印象は悪いのに、更に悪くなった気がする。
「……ごめん。気にしないで。それ、わたしの癖だから」
目の前で手を合わせて、軽く頭を下げる。