第22章 兄と弟
「食べてくれて良かった。そう言えば、玄弥くんは元気?」
気になっていた玄弥くんの事を聞いてみる。確か玄弥くんの鎹鴉とはあまり仲は良くなかったように書いてあった記憶があるからだ。
「元気ニシテル。今マデ俺ヲ使ウコトハ、ナカッタ。玄弥カラ頼マレタ初メテノ仕事ダ。チャント渡スカラ安心シロ」
「そっか、元気なら良かった。手紙は榛にお任せします。よろしくね」
やっぱり仲は良くなかったようだ。でも、今回玄弥くんから頼んだようだから、これからは大丈夫かなと思う。
「任セロ。ジャアナ!」
いつの間にかあげたいりこは全て食べられていて、そう言うと共にスッと飛び立っていく。
「行ってらっしゃい!気をつけてね」
辛うじて声をかけたけど、もう豆粒みたいだったから、聞こえていたかは若干微妙だ。
「ソノ言イ方ダト、ノブノ鴉ミタイネ」
クスクスと笑っているかのような、少しだけ跳ねた感じで木蓮が言う。
「そうかな?」
「エェ。完全ニ榛モ、餌付ケサレタワネ」
「餌付けって…」
「ホラ、ココニイルデショ」
「…俺ハ餌付ケサレテイルワケデハナイ。イツモノブガ、オ前ノツイデニクレテルノヲ、貰ッテルダケダ」
「ソレガ餌付ケッテ言ウンジャナイ?」
何だか言葉に棘が見え始めたので、やんわりと話の腰を折る。
「ほらほら。言い争わないの。私が好きであなた達にあげてるんだから。さあ、残りの洗濯物を干しちゃわないと」
立ち上がり、途中だった洗濯物を竿にかけていく。
「所デ、手紙ハ何ダッタノ?」
おやつを食べ終わった木蓮が、ふわりと側に寄ってきて尋ねる。
「玄弥くんが会いたいって。何だろね」
「風柱ハ頑ナダモンネ。ドウニカナラナイノ、爽籟?」
手紙のままを伝えたのに、兄弟仲の事だと分かったらしい。それだけ鬼殺隊の中でも知れ渡っているのかもしれない。
「…実弥ハ、色々ト考エテイル」
少し考えてから、爽籟はその一言を呟いた。