第22章 兄と弟
【実弥side】
「竈門…かァ…」
ふと、先程の宇髄の話から、柱合会議での鬼を思い出す。
あの鬼、俺の稀血に涎を垂らして反応していたのに、襲う事はなかった。俺が刺していたにも関わらずだ。
あの鬼は、他の鬼と違う。
俺自身もそう思う。
鬼に対峙してきた分だけ、鬼に俺の稀血が効くと知っているからこそ、そう思わざるを得ない。
そうだとしてもだ。
簡単には認められない。
鬼は全て殲滅する。
それが俺の全てだ。
残りのおはぎを口に入れる。
じんわりとした甘さが口の中に広がると共に、またノブの間抜けな顔が浮かぶ。
「本当、あいつの食べる姿は見てて飽きねえよなァ」
近いうちに隣町に連れてってやろうか。
前に甘露寺と行った後は本当に煩かった。それだけ珍しい物ばかりだったんだろう。
連れていってやって、珍しい物を食べれば、更に間抜けな顔をするんだろう。
「フッ」
顔をこれでもかと緩ませて食べる姿を想像して、笑いが漏れる。
最後のおはぎを口に放り込む。じんわりとした甘さがなくなると共に、気持ちも切り替わる。
お茶を一口飲む。周りはもう紅く染まってきた。そろそろ仕事の時間だァ。
いつの間にか苛つきは落ち着いていた。
だがそんな事は気にも止めず、俺はいつもと変わらず夜の闇に飛び込んだ。