第22章 兄と弟
【実弥side】
「正解。それと俺が今回命があるのは、竈門の妹の鬼のお陰だ」
「ア゛ァッ?!」
何だって、鬼だァ?あの鬼は俺の稀血には反応しなかったが、助けるとかないだろう。
そんな事を言えば、血気術で上弦の鬼の血気術を焼き払い、それで命が助かったと言う。
「あり得ねェ」
「あぁ、本当にあり得ない話だ。だけど、俺はそれで命が助かった。鬼に対する考えは全く変わらんが…お館さまが言ってたみたいに、竈門の妹はちょっと違う気はする。これからも見極めていく必要はあるだろうがな」
「…お前が何と言おうと、俺は鬼は殲滅するだけだァ。竈門の妹の鬼も、少しでも変な動きをすればすぐに殺す」
「お前も大概頑固だよなぁ」
宇髄のこの顔は好きじゃねェ。何でも見透かしているような、時々そんな顔をする。
苛つきが抑えきれず、立ち上がる。
「アァッ!無駄口を叩ける位だから、さっさと復帰しやがれェ!じゃあな」
そう吐き捨てて、振り返る事もなく部屋を出る。
「引退するって言っただろう…って、聞こえちゃいないか。相変わらずだな、不死川は。……でも、まぁ、ありがとうな」
宇髄がそう呟いた言葉は、俺の耳には入ってこなかった。
苛ついたまま屋敷を出る。途中で宇髄の嫁と蝶屋敷の奴らに声をかけられたが、アァとだけ返す。苛ついてる俺の様子が伝わったのか、それ以上何か言われる事もなかった。
思ったより時間が早いなァ。そう考えながら、蝶屋敷の近くの町に向かう。
軽く食事を摂り、甘味屋でいつもの物を購入する。
町を出てある程度走れば、随分と日が陰ってくる。日に日に日が短くなっているのが分かる。
俺の担当地区まで戻った所で、一度立ち止まる。座るのにちょうどいい石を見つけ、そこに腰を下ろす。
「ちょっと好みじゃねぇなァ」
先程買ったおはぎを口に入れる。さの屋のおはぎの方がやっぱりうまいとは思いつつも、二つ目のおはぎを口に持っていく。
あいつは今日も食べただろう。ふとそんな事を思う。
ノブはいつも旨そうに食う。大口を開けて間抜けな顔で。でも口に入れる度に本当に幸せそうに笑う。
あんこが好きと言ってたが、あの顔を見れば本当に好きなんだろうと納得する。
そんなノブの姿を思い出しながら、残りのおはぎを口に入れる。
気づけば、自然と顔が緩んでいた。