第22章 兄と弟
【実弥side】
「それにしても、汚ったねえ字だなぁ。手紙の作法とかも全く分かってねえな」
「それでも随分と上手くなった方だァ」
書けるだけでもいいもんだ。だけど、問題なく書ける奴らはそうは思わないらしい。
「そうなのか?でも、文章はノブらしいな。ほら、不死川も読んでみろよ」
返事も聞かずに手紙を押し付けられる。
手にある紙を覗けば、いつも見るノブの字が並んでいた。いつもは書き出しが俺の名前だが、今日は違う。宇髄宛の手紙だから、当たり前の事だ。なのに、何故か少しだけ苛つく。
『天元さん
けがの具合はいかがですか。
およめさんたちもお元気にされてますか?
迷惑ばかりかけたらだめですよ。
元通りとはならないでしょうが、
少しでも早く前のように生活できるように
なるといいですね。
実弥さんとまた一緒にお酒、飲んであげて
くださいね。でも勝手に来たらダメですよ。
あと、私は相手はしませんから、
お二人でどうぞ。
ノブ』
「来なくていいからなァ」
読み終わり、手紙を宇髄に返しながら、そう言う。
「何だよ、つれないなぁ」
ニヤリと笑う宇髄は、全く聞き入れる気はなさそうだ。
この言葉だけで来ないのであれば、来てないだろう。
返事の変わりにジロリと睨んでやるが、全く意に介す様子はない。
「まぁ、いい。んで、見舞いと、後は何が聞きたいんだ?鬼の事か?」
「あぁ。上弦、どうだったんだァ」
当初の目的でもある、鬼についての情報を聞く。
上弦の鬼になれば、より強い血気術も使うだろうし、それぞれ違う。全く無駄な情報にはなるかもしれねえが、何もないよりはましだ。
聞けば聞くほど、鬼を殲滅するという思いだけだ強くなる。
「何で俺は下弦にも当たらないんだァ」
「そこは、運だろうがなぁ。あ、伊黒にも言ったが、お前の嫌いな若手、生きてるぞ」
宇髄はニヤニヤとしながら謎かけのように言う。
「ハァッ?…もしかして、竈門かァ?」
すぐには思い当たらなかったが、嫌いなと言う単語で思いだした。