第22章 兄と弟
【実弥side】
「具合はどうだァ」
そう言いながら、宇髄がいるという部屋に入る。
「おっ、不死川じゃねえか。さっきまで伊黒と甘露寺も来てたぜ。意外とみんな情に厚いのな」
「怪我の具合はどうだァ?」
「もう闘う事はできねえな。左手と左目がダメだ。不自由さはあるが、慣れれば生活はできるだろうよ。嫁も手伝ってくれてるしな」
宇髄は左腕を見せる。手首から先はない。
左目は包帯に巻かれていて分からないが、もう見えないのだろう。
大きく一息をつく。
「煉獄がいなくなって、その後も柱は誰もいない。その怪我だからお前も抜けるのも仕方ねえが、どうするんだァ。下の奴らは育ってねェし。誰が抜けた穴を埋めるんだよ」
「風柱様、立ち話はなんですから、こちらにお座り下さい」
「アッ、すまねえ。それと、これ」
持っていた風呂敷包みを宇髄の目の前に差し出す。
「んー?お前が手土産とか珍しいなぁ。どうせノブに持たされたんだろ?」
「…どっちでもいいだろうッ」
何でも見透かすような顔で言いやがる。言われた事が間違ってねえから、言い返せもしない。
「ククッ。ありがとうな。雛鶴」
「風柱様、お気遣いありがとうございます。お開けしても?」
「宇髄にやった物だ。後は勝手にしろォ」
宇髄に渡した風呂敷包みは、すぐに嫁が持っていく。
女が三人いても静かなもんだと思っていたら、すぐにその考えは打ち破られた。
「はい。あら、天元様、お手紙が入ってましたよ」
「うわー!綺麗な練り切り」
「勝手に開けるな、須磨。それと煩い!」
「だってまきをさん、本当に綺麗なんですよ。ほらほら、見てください」
「へぇー本当だ」
「あら、本当ね。天元さま、たくさん頂いてますので、蝶屋敷のみなさんにお裾分けしても?」
「あぁ。不死川からと言って、分けてやりな」
ニヤニヤ笑いながら言う宇髄は、余計な事しか言わねェ。
「余計な事は言うんじゃねェ!」
「ふふふ。それではごゆっくり」
一応そうは言ったが、あの嫁の笑い方。宇髄の嫁だ、間違いなく言うな。
嫁達は何か言いながら、甘味を持って出ていった。