第22章 兄と弟
その後ろをついて行くように、私も歩きだす。
「取りあえず、宇髄は左手と左目をやられてるらしい。伊黒が言うには、柱を引退するとか言ってるようだし、もう闘えねえみたいだなァ。まぁ、話もできるんだし、命は大丈夫そうだァ」
「伊黒さんに会ったんですか?」
まさかの人物に驚いてしまう。
「あぁ。吉原でやりあったって聞いたから、そっちに向かったんだが、その途中で会ってな。あいつも結局間に合わなかったみたいだがなァ」
部屋に戻った実弥さんは、そう言いながら、カチャカチャと金属音を立てながら刀を外す。
そう言えば、闘いの後に伊黒さんがネチネチ言っている場面があった。鴉で情報は共有されていて、支援の連絡が入っていたのかもしれない。
そうでなければ、あんなにすぐに姿を見せることは叶わないだろう。
天元さんもほぼ原作通りの結果になっているのだろう。物語が大きく変わっていないことに安心する。
「そうですか。怪我はひどいのかもしれませんが、お命があって、良かったです。朝食の準備をしてきますね」
気づけば、実弥さんは隊服を脱ごうとしている所だった。慌てて襖を閉めて、台所に戻る。
味噌汁を温めなおし、ご飯をよそっていれば、浴衣に着替えた実弥さんが椅子に座る。
「取りあえず、午後から蝶屋敷に顔を出してくる」
「蝶屋敷ですか?」
久しぶりに聞く単語に少しだけ驚きながら答え、お盆に載せた朝食を実弥さんの前に置く。
「あぁ。胡蝶って、覚えてるか?」
私の反応が、蝶屋敷を知らないと受け取ったらしい。まぁ、こっちに来て、蝶屋敷という単語は聞いていないと思う。
しのぶさんの事も、流石にめちゃくちゃ覚えてます!とは言えず、少しだけ濁す。
「えっと、以前お館さまの所でお会いした方ですよね?確かしのぶさんでしたっけ?」
「そうだァ。胡蝶の屋敷が蝶屋敷って、呼ばれててなァ。宇髄達はそこに運ばれてるから、どんな様子か見てくる。それに、お前も気になってんだろォ、宇髄の怪我。取りあえず、もう少し待っとけェ」
「あ、ありがとうございます!」
自分も心配してるだろうけど、私の事まで配慮してくれて。どれだけ実弥さんは優しいのだろう。
胸がギュッと締め付けられる。