第21章 秋祭りを歩く
目的の為には全ての事をなげうってでもやる実弥さんの事だ。お館様から言われなければ、絶対に休むことなんてないだろう。
「でも、ちゃんと休む事も大事ですよ。いざというときに、最大限の力を出せなかったら、悔やまれるでしょ?お館様もそう思われているから、実弥さんに休むように言ってるんじゃないですかね」
いくら若いからと言っても、少しは休息も必要だ。もし今後、物語が変わって、どこかで上弦の鬼や無惨に会う可能性も否定できない。
「フンッ」
至極面倒臭そうな顔だが、そこはちゃんと分かって欲しい。
「そうだ。今度お休みになったら、隣町に行くっていう約束も覚えておいてくださいね」
「ん?そういや、お前、約束守ってるのかァ?」
「うっ。ま、守ってるつもりです」
「お前と行くと大変だからなァ」
少しだけ眉間に皺が入る。
いや、私のせいじゃないと思うのだ。迷子にはなってない…はずだし、ただ声をかけられただけだ…。あとは何も振り回してはない…と思う。
「…今日のは全て不可抗力です」
「クククッ…そうだなァ。少しは考えてやるよ」
私が何とか捻り出した答えに、可笑しそうに笑う。何だか今日は笑っている実弥さんが多くて、目が離せない。
それに、考えてくれるという答えだけど、実弥さんがこう言うと本当に実現しそうで、期待が高まる。
「わ、本当ですか?ありがとうございます。連れてって貰えるように、これまで以上に頑張りますね」
「程々になァ」
ふわりと優しい顔で笑いかけられ、左手で頭をポンポンとされる。
今日一番で心臓が跳ね、一気に顔が熱くなる。
すぐに手は離れ、顔も前を向いたが、私の心は乱れたままだ。
「顔が熱い…心臓が煩い…」
「ん?何かいったかァ?」
「いえ、お気になさらず…」
自分の気持ちを落ち着かせるため、お屋敷に着くまでの短い間、甘味屋での事を話した。ひたすら話し続ける私の話を、実弥さんはちゃんと聞いてくれた。