第21章 秋祭りを歩く
「それと、お祭りとても楽しかったです。色々と勉強にもなりましたし。実弥さん、今日は本当にありがとうございます」
少しだけ実弥さんの前に出て、改めてお礼を伝え、軽く頭を下げる。
「まぁ、俺も今日でお前の事が更に分かったなァ」
「本当ですか?それは良かったです」
「お前、前向きだなァ。俺が分かったことはなァ、ノブは相変わらず常識知らずで、すぐに迷子になるわァ、男には絡まれるわァ、気になった所には考えずに突き進むわァ、人の話しは聞いていな…」
そのままいい事だろうと受け取ったら、違っていた。
実弥さんから出るあまりの失態に、一気に顔が熱くなる。
「すみません!それくらいで勘弁してください」
流石に話の途中で実弥さんの腕を掴んで、急いでそう言う。そんな私の反応を横目で見ながら、クククっと面白そうに笑う。
「ノブが楽しかったなら、それでいいんじゃねえかァ」
慌てた私の顔がよほど面白かったのか、からかいがいがあったのか、そう言った後もニヤリと意地悪そうに笑う。
よし、話を変えよう!
「実弥さんは、どうでした?」
「うーん。久しぶりの祭りだったが、まぁ祭り自体は仕事で様子は見てたしなァ。代わり映えはしねぇなァ。それにしても、今日はお前に振り回された印象しかねえなァ」
「あぁ…本当にごめんなさい」
自分の失態を考えれば、振り回した事などすぐに分かる筈なのに、何も考えずに聞いてしまう自分が怨めしい。
「まぁ蕎麦は旨かったし。祭りの場に身を置くのも、たまにはなァ」
今日の実弥さんはいつもと変わらず意地悪そうに笑うけど、その時々で柔らかく笑う。
その顔に何度も心臓がドクンと跳ねる。
「そうですよ!実弥さんもたまには休まないと!またお館様から休むように言われますよ」
「休みなんて要らないんだがなァ」
腕を後頭部の辺りで組み、顔をしかめながら、何とも面倒そうに言う。