第21章 秋祭りを歩く
「あまりにも喋らねぇし、周りも見てねぇし。本当お前は集中したら、そっちに意識が持ってかれるのなァ」
「…すみません」
「だいたい子どもの玩具だろう」
「そうなんですけど、実弥さんから頂いた物ですし。それに、これだと、ほら風が分かるじゃないですか」
「ハァ?」
何を馬鹿な事でも言ってるんだと、怪訝そうな顔をしている実弥さんを見て、クスッと笑う。
「風って見えないでしょ?でも、こうやって別の物を通すと、風があるって分かるんですよね」
「風、ねェ」
「まぁ、人の受け売りなんですけどね」
まぁ、うろ覚えだけど、某漫画の話だ。確か、少し違う意味だった様に思うけど。
「実弥さんは風柱ですし、そしてこの色ですし。何だか実弥さんみたいじゃないですか」
目の前でクルクルと回る風車を実弥さんにも見せる。
「例えそうだとしても、欲しがる奴はいないと思うがなァ」
「そうですかね?でも、私はすごく嬉しかったですよ」
「普通なら、さっきの簪とかの方が喜ぶんじゃねえのかァ?」
実弥さんは、少しだけ申し訳ないのか、私に目を向けることはなく、頭をガシガシと掻きながら、そう言う。
「簪…あぁ、真一郎さんから貰いましたね。若い子なら装飾品は喜ぶんじゃないですかね?手が込んでて綺麗な簪でしたけど、あれは普段使いできる物ではないですし。そもそもあの色は苦手なんですよね。それでも、好きな人からの贈り物とかだったら、どんな物でも嬉しいんでしょうけど…」
「結局、あいつの贈った簪は気に入らなかったってことかァ」
ニヤニヤとして、意地悪そうに言う。慌てて、挽回するように口を開く。
「あ、いや、でも、せっかく頂いたので、参考にさせてもらって何か作ろうと思ってますよ。そのままだと、もったいないですし。私にとっては玩具でも、実弥さんから頂いたこの風車の方が何倍も嬉しいですよ」
「…そうかァ」
そう言うと、ふっと少しだけ実弥さんの口元が緩んだ気がした。
ん?そう疑問に思い、もう一度実弥さんを見ると、いつもの眉間に皺を寄せている顔が目に入る。
きっと気のせいだったのだろう。
お屋敷までまだもう少し距離がある。
空を見上げれば、少しずつ夕暮れに近づいていた。お屋敷に戻ればすぐに実弥さんは出ていくだろう。