第6章 お屋敷での生活
屋敷に戻ると、また怒鳴られながら家事全般をする。
あっという間に夕方だ。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るから。また明日、今日と同じ時間に来る」
「ありがとうございました!明日もよろしくお願いします」
「それと俺が帰ったらすぐ藤の花のお香を焚いとけよ。夜は鬼が動き出す。じゃあな」
「はい。ありがとうございました」
鬼は藤の花の匂いが苦手だ。言われた通り、香を焚く。とてもいい匂いだ。
日が落ちると、辺りはすぐに真っ暗になる。大きな屋敷に一人だと思うと、少し怖い。
「実弥さん、早く帰ってこないかな」
独り言を言ったり鼻唄を歌い、気を紛らわしながら、身の回りのことをする。
もう寝る準備は万端だ。まだ実弥さんが帰ってくる気配はない。
遅くなるのだろう。
今日の柱合会議のことを思い出す。
怪我をして帰ってくるだろうし、間違いなくイライラしているだろう。お館さまの意向だとはいえ、鬼を容認しないといけない。
全ての鬼を滅する。今の実弥さんの全てだ。
でも、例えそれが分かっていて私に何かできるかと問われても、答えはノーなのだ。分かっているからこそ、何もできない。何か言ったところで、そう易々と実弥さんが容認できることではない。
父のように慕っているお館さまの願いだからこそ、反対しないだけだ。
実弥さんの気持ちが少しでも落ち着いてくれないかな。
そう思い買ってきたおはぎを実弥さんの部屋に置き、布団に入った。