第21章 秋祭りを歩く
【実弥side】
「…お前なァ、そんなこと簡単に言うなァ。本当に喰うぞォ」
「まあ、実弥さんなら、喰われても大丈夫ですよ」
ケラケラと笑いながら言う姿と言葉の解離に、俺の中の雄の感情が昂らされ、惑わされる。
「んなこと、笑いながら言うことじゃねぇよッ!クソッ!取りあえず、蕎麦屋に行くぞォ。蕎麦屋だァ、お前も探せェ!」
何とか感情を抑え込み歩き始める。
「はぁーい」
何とも言えない間延びした返事をしながら、迷いもなく俺の横に来て歩く。
そんなノブを横目に見れば、俺を見上げるノブと目が合う。
ヘラリと笑うノブの頬はまだ血色が良い。
「美味しい蕎麦屋さん、あったらいいですね」
こっちの気持ちなんて何にも考えてないだろう。
無意識に言葉を紡ぎ出して動く口元を見る。
あの口が俺のモノを咥えて…。
その瞬間、一気に下半身に熱が集中し、硬さを持ち始める。
何を考えてんだァ、俺はァ。からかうだけだっただろうがァ。
「チッ」
「ん?どうかしましたか?」
俺の顔を覗き込むノブは、いつもと変わらない。ただ、少しだけ血色がいいだけだ。
だけど、その血色がいい顔が目に入る度に、無意識に口元に目がいき、その度に下半身が疼き出す。
結局自分で自分の首を締めたようなもんだ。
「ハァッ。何でもねぇよ」
一つ大きく息を吐き、前を向く。
横にいるノブの存在を認識しながら、蕎麦屋を探す。
ノブの顔がいつものように戻るまでは、極力前を向く。
そして、気を紛らわすために、店を探したのだった。