第21章 秋祭りを歩く
【実弥side】
「ん?それは私が襲われる可能性があるって事ですかね?いやー、斉藤さんはあり得ないでしょう。華子さんっていう、すごく素敵な女性がいるんですから。こんなので間に合わせなくても、ねえ。
そうそう、乳くりあうって言ったらものすごく怒られましたよ。仲睦まじいって言わなきゃだそうです。
あ、話ずれましたね。こんなおばちゃんに興味はないでしょう。まぁ、あのお二人はよっぽどお腹が空いてた、じゃなくて、困ってたんでしょうね。誰でも大丈夫な方々だったんですね、今から思えば。
そう考えると、私も可能性は低いですけど、ゼロではないでしょうから、気を付けますね。
蕎麦屋に気を付けたらいいんですかね?まぁそんなに他人と関わることもないですしね~」
相変わらずヘラヘラとしながら、一気に吐き出した。
自分に対する評価が低いのか?
それにしても危機感が無さすぎる発言ばかりで、呆気に取られる。今、ついさっき、身の危険に晒されたばかりだと言うのに。
「…お前なァ、何でそんなに他人事なんだよ」
「私の事なんて興味のある人なんて、どんだけいると思います?蜜璃ちゃんみたいに胸もないし、自分で言うのもなんですけど、ちょっと変わってますし。女としての魅力なんて皆無ですから」
「……」
あまりにもこの場にそぐわない発言に、唖然とする。ノブの女性としての魅力…ないとは言いきれないが、具体的には出てこない。
無言を貫いていると、見かねたノブが口を開く。
「それよりも、食べに行きましょうよ、実弥さん」
「あぁ、そうだな。何がいい?」
「…お蕎麦」
「…お前なァ」
今までの会話が何だったのかと思う程、呆れた発言に、流石の俺も頭を抱える。
「だって、蕎麦、蕎麦言ってたから、食べたくなったんですって!いや、別に違うのでもいいんですよ。ただ聞かれたから、蕎麦食べたいなぁって思っただけです。すみません!」
こいつに振り回されっぱなしなのは、何か癪だな。
そんなことを思った時に、ふと悪戯を思い付き、立ち止まる。